みたき園コラム

text by Naoko Kobayashi

Vol.09

小鳥のcafe クインス

やさしい光に溢れるcafeクインスには、また別の空気が流れていると言われます。そんなcafeクインスの物語を紹介させてください。
この場所には以前、創業者の母、現在の若女将の祖母がつくった茶室がありました。滝を見ながら縁側でお抹茶を飲むのです。ガラス張りは当時から。若女将が生まれたとき、喜んだ祖父が記念にと、花が可愛らしく、実は香り良く喉に良い、かりんの苗木を配り歩きました。カフェとしてのリニューアル時、店名を、かりんの英名quince(クインス)に決めたのは若女将です。生き物好きの創業者が、頭に「小鳥の」を付けて、「小鳥のcafe クインス」となりました。
採光のために伐ったヒノキで、一枚板の大きなテーブルとカウンターをつくってもらい、いまも大切に使っています。芦津の源流の水と、特別ブレンドの豆で抽出する水出しコーヒーを、毎日ゆっくり淹れています。当時20代半ばの若女将は、みたき園にあたらしい風をと意気込みました。とはいえ、次のみたき園を背負って立つ覚悟は定まり切らず。仕込みの時間、水出しコーヒーの丸いガラスタンクに映る季節に、揺れる心境を投影させ、眺めたこともありました。そんなときのクインスを、お菓子の香りと愛情で満たし、守ってくれたのが、いまはみたき園の厨房の中心メンバーとなったスタッフでした。
おかげさまでファンも多いクインス。メニューも小鳥モチーフの小物の販売も、さらに磨けるはずが、課題はここを育てるスタッフの不在です。園全体の忙しさから、どうしても手薄になってしまいがち…。大事な大事な「小鳥のcafeクインス」、お任せできる方に出会える日を心待ちにしています。