みたき園コラム

text by Naoko Kobayashi

Vol.07

みたき園の“おかず”

「炊き合わせ」と呼ぶのが一般的でしょうか。スタッフの間でいつからか“おかず”と呼ばれる煮物を、やや大ぶりの、蓋つきの器でお出ししています。特に干し大根は、常連のお客さまに、「みたき園といえば干し大根、干し大根と言えばみたき園」と称されるほどで、食材としてお土産処で買い求められる方もいます。
干し大根の仕込みは冬の初めに始まります。畑で抜いた千本ほどの大根を川流れで洗い、包丁を手に一本一本、約16等分に切ったら、天日干しして寝かします。次は初夏。竃(くど ※かまどのこと)を立て、大きな鉄の鍋を薪火にかけると、かぶるくらいのお湯でぐつぐつ、汗をかきかき。茹で汁がなくなり、大根がすっかり飴色になったら、もう一度天日で干して、“おかず”の材料、干し大根のできあがりです。
“おかず”には他に、塩漬けにして通年使うフキや筍、大きな一枚昆布からつくる結び昆布、高野豆腐、人参を。たっぷりのお出汁で、お醤油、お砂糖だけの素朴な味付けですが、素材ごとに分けて煮た上で合わせています。
山あいの暮らしでは、春と秋に収穫した山菜や野菜を貯蔵して、お正月にも、冠婚葬祭にも使いました。蓋を開けると、そんな里山の保存食を現代に伝える、“おかず”が顔を出します。地味ながら、私たちにはいとおしい一皿です。